
一之瀬脳神経外科病院では、脳疾患と関わりの深い疾患についても診療を行っており、糖尿病もその1つです。糖尿病は脳卒中の重要な危険因子であると同時に、腎臓の機能低下を引き起こす原因にもなります。
当院では毎年「世界糖尿病デー」に合わせて糖尿病教室を開催し、糖尿病に関する正しい知識の普及にも取り組んでいます。
本コラムでは、糖尿病と腎臓の関係について、検査で分かることや腎機能を守るためのポイントを中心に、わかりやすく解説します。
糖尿病の治療の目的は、「糖尿病があっても、血糖をコントロールすることによって、糖尿病がない人と同じ健康寿命を保つこと」です。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。
なぜ血糖をコントロールすることによって健康寿命が保たれるかというと、慢性合併症の発症や進行を防ぐことができるからです。
それでは糖尿病による慢性合併症とは、どのようなものでしょうか。慢性合併症は長期間高血糖が継続することによって生じてきます。これは高血糖により血管が徐々に障害されるためです。そして慢性合併症は、障害される血管の大きさにより細小血管障害と大血管障害に二分されます。
細小血管障害には、網膜症、腎症、神経障害があります。糖尿病腎症は腎臓にあるネフロンという組織が障害されることによって生じます。ネフロンはたくさんの毛細血管が集まってできており、この血管が高血糖によって障害されることによって腎臓の機能が障害されるのです。腎臓の機能が高度に障害されると、人工透析が必要になります。糖尿病腎症は人工透析導入の原因の1位で、日本では約350万人が透析を受けています。透析が必要になると日常生活に影響し、腎臓を守ることは大変重要です。

外来受診時や健康診断などで腎臓の状態を確認する検査項目としては、血液検査で測定するeGFRと尿検査があります。eGFRは腎臓の濾過機能を反映する検査項目で、機能が低下するとeGFRも低下します。
尿検査には試験紙による簡易検査と尿アルブミンの測定があります。試験紙では尿たんぱくが陰性から3+までの4段階で判定され、おおよその尿たんぱくの程度を知ることができます。尿アルブミンは定量試験で、試験紙よりも正確に尿たんぱくの程度を知ることができます。
eGFRと尿アルブミンの結果から糖尿病腎症の病期分類をすることができます。病期は第1期~5期に分類され、病期を知ることによって、治療に役立てることができます。
糖尿病の患者さんが腎臓を守るために重要なことは、①血糖コントロールを良好に保つこと、②血圧を適正に保つこと、③LDLコレステロールを適正に保つことです。
①血糖コントロールの目標はHbA1cが7%未満
②血圧は130/80mmHg以下
③LDLコレステロールは120mg/dl以下
が推奨されています。血圧が高くならないようにするためには、減塩も重要です。
また近年、腎保護効果のある医薬品が使用できるようになってきています。SGLT-2阻害薬とGLP-1受動体作動薬です。SGLT-2阻害薬はブドウ糖の尿への排泄を促進することによって血糖を下げる薬です。GLP-1受動体作動薬は膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促進して血糖を下げる薬です。SGLT-2阻害薬とGLP-1受動体作動薬はeGFRの低下を抑制する効果が確認されています。しかしどちらの薬も一旦低下した腎機能を回復させることは困難で、腎機能を低下させないための予防が重要です。
糖尿病の治療の目的は、糖尿病があっても良好な血糖コントロ-ルを保つことによって、合併症の発症や進行を抑え、糖尿病のない人と同じような健康寿命を得ることです。そして良好な血糖コントロールを保つことは、腎臓の機能を低下させないためにとても重要です。
一之瀬脳神経外科病院では、糖尿病を脳卒中の重要な危険因子の1つと捉え、専門外来を設けて診療を行っています。今後も患者さん1人ひとりに寄り添い、よりよい治療を受けていただけるよう取り組んでまいります。
一之瀬脳神経外科病院 糖尿病専門医
丹羽 智宏
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