脳梗塞とは、何らかの原因で脳の血管が詰まることで血流が途絶え、脳細胞に十分な酸素やエネルギーが供給されずに壊死してしまう病気のことです。脳梗塞は「ラクナ梗塞」、「アテローム血栓性脳梗塞」、「心原性脳塞栓症」の大きく3つに分類されます。
脳の奥には、太い血管から枝分かれした穿通枝(せんつうし)と呼ばれる細い血管があります。この穿通枝の先が詰まる脳梗塞をラクナ梗塞と呼びます。“ラクナ”はラテン語で”小さなくぼみ“を意味する言葉で、直径15㎜以下のものがこれに該当します。特に高齢者や男性に多く発症する傾向があります。起きるダメージの範囲が小さいため症状が現れないこともあり、そのため無症候性脳梗塞や隠れ脳梗塞と呼ばれることがあります。
ただし、症状がなくても安心はできません。放っておくと、本格的な脳梗塞や脳出血を発症したり、認知症になるリスクが高くなります。ラクナ梗塞は動脈硬化により引き起こされるため、動脈硬化の原因となる高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病や、これらを悪化させる喫煙・過度な飲酒・運動不足・肥満などを避けることが大切です。
脳内の比較的太い動脈や頚動脈の動脈硬化が進行し、狭窄部に血栓が形成されて詰まったり、血栓が壁からはがれて流れ、脳の血管を詰まらせてしまうことによって生じる脳梗塞です。血管狭窄による脳血流の低下により脳梗塞が起こる場合もあります。アテローム血栓性脳梗塞は、一過性脳虚血発作(TIA)という脳梗塞の前触れ症状(一時的に脱力や片麻痺、手足のしびれ、言葉が出てこない、目の前が真っ黒になる等)が出る患者さんが多いのも特徴です。このTIAが起きた時に、一時的なものだからと放っておかないようにしなければなりません。またラクナ梗塞と同様に高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病や喫煙などが原因となります。
心臓で作られた血栓が脳へ運ばれて、脳の動脈を詰まらせるものを「心原性脳塞栓症」と呼びます。心原性脳塞栓症の主な原因は、心房細動と呼ばれる脈が不規則に乱れる不整脈によるものです。他に重症の心不全、心臓弁膜症が原因になることもあります。心房細動は60歳以上の年配の方に多いとされています。心臓は心房(心臓の上側の部屋)と心室(下側の部屋)が規則正しいリズムで収縮・拡張を繰り返して、ポンプのように血液を全身に送り出していますが、心房細動になると、心房が細かく不規則に震えた状態になります。すると、心房の中で血流が滞り、血の塊(血栓)ができます。こうして心臓にできた血栓は大きいものが多いため、脳の太い血管が詰まり、脳梗塞が広範囲に及ぶこともしばしば見られます。前触れもなく突然発症し、重症になりやすいのが心原性脳塞栓症の特徴といえます。
脳卒中の患者さんは、高齢になるほど増える傾向があります。これは、脳卒中の主な原因である動脈硬化や心臓病が加齢とともに進行するからです。また、近親者に脳卒中の経験がある人がいる場合は、そうでない人より脳卒中を起こす確率が高いともいわれていますので、高齢者や家族歴のある方は、特に予防を心がけ、また前触れ症状にも注意しましょう。
一之瀬脳神経外科病院 脳神経外科 小林 辰也
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