前回の健康コラムでは「てんかんと間違われやすい疾患」についてお話させていただきました。今回はてんかんの啓発活動についてお話します。
てんかんは年齢に関係なく誰もが発症しうる病気で、有病率は約1%、日本での患者数は約100万人と推定されます。てんかんは「てんかん発作」を繰り返し起こす、慢性的な脳の疾患です。簡単に言うと脳の一部や全体が勝手に興奮してしまうために、発作が起きる病気です。
これまでの健康コラムで「てんかん」、「てんかんと間違われやすい疾患」について取り上げてきましたが、てんかん診療に携わっていると、てんかん患者さんやご家族が生きづらさを感じていたり、社会での壁を感じていることに気づきます。その多くは差別や偏見です。てんかんはこれだけありふれた病気であるにも関わらず、一般の方や社会のみならず、時には医療関係者にも適切に理解されないことが大きな要因となります。
てんかんの理解を深めるための啓発活動として、世界中で毎年3月26日に「パープルデー」が行われています。「パープルデー」は、2008年カナダで9歳の少女だったCassidy Meganさんが、自らのてんかんについて周囲に打ち明ける際に経験した様々な葛藤を通じ、「世界中の人にてんかんについてもっとよく知ってほしい」「てんかんであるがために差別や孤独を感じている人に、あなたは一人ではないと伝えたい」という願いから始まり、その取り組みは世界中に広がっています。
長野県内では、長野県てんかん支援拠点病院である信州大学医学部附属病院てんかんセンターが主催として、2023年より毎年3月に「パープルデー信州」を開催しております。
2025年のパープルデー信州は、3月20日(木・祝)に信毎メディアガーデンで開催予定です。正しくてんかんを理解して頂けるよう講演会を中心に、アート展や演奏などを楽しんでいただけるような企画も予定しています。また、今年もてんかん患者さんやご家族へ連帯の思いをお届けできるよう、国宝松本城を紫色にライトアップします。
一之瀬脳神経外科病院でも、てんかんにお困りの患者さんが最新のてんかん診療にアクセスできる窓口となるために、てんかん外来を開設しております(診療:毎月第4土曜日・午前)。また、パープルデーに合わせ、病院外観を紫色にライトアップするなど、啓発活動を行っています。
てんかんは、患者さんにとっても医療者にとっても難しい病気です。
それはてんかんにはいろんな種類があり、人それぞれ違いがあり、なぜてんかんになったのか、どのように付き合っていったらいいか分からないこともよくあるからです。診断・治療がうまくいっていればいいのですが、そうでないと自分のやりたいことができなくなり、気づかない内に人生の彩(いろどり)を大きく変えてしまう力がてんかんにはあります。
てんかん患者さんやご家族が充実した生活を送れるように、正しい診断、薬物治療、時には外科治療も検討しながら診療をしていきたいと思っております。またてんかん診療は患者さんやご家族が受け身であるといい治療ができませんので、病気や治療、目標とする生活、社会福祉制度、運転など患者さんに大切なことを十分に話し合った上で、積極的に診療に参加してもらうようにしています。
もし難しいてんかんの場合には、信州大学医学部附属病院とも連携して、検査や治療も検討します。てんかんのことでお困りのことや知りたいことがありましたら、遠慮なくご相談下さい。
一之瀬脳神経外科病院 てんかん外来
信州大学医学部附属病院 てんかんセンター
パープルデー信州実行委員会 代表
金谷 康平
午前:月~土曜日 8:30~11:30
午後:月~金曜日13:00~16:00