健康コラム

脳卒中予防シリーズ②糖尿病

脳卒中予防シリーズ②糖尿病

一之瀬脳神経外科病院では、脳疾患に関わりの深い疾患の専門外来を設けて診療を行っており、糖尿病外来もそのうちの1つです。今回は脳梗塞の危険因子でもある「糖尿病」について詳しく解説します。

糖尿病の症状

日本の糖尿病の有病者数は2016年時点で約1,000 万人、そのうち治療を受けているのは76.6%です。40歳代の男性は治療を受けているのが51.5%で、他の世代よりも低くなっています。仕事が多忙などの理由のため無治療で経過してしまっている方が多いようです。糖尿病の症状は血糖値 300mg/dLくらいまでは無症状です。血糖値 400mg/dLを超えてくると、口渇、多飲、多尿、急激な体重減少などの症状がでてきます。このような症状がでなくても、長期間高血糖が継続すると慢性の合併症が生じてきます。これは高血糖により血管が徐々に障害されるためです。症状がないからといって糖尿病を放置していると、徐々に慢性合併症が進んでしまいます。

糖尿病と合併症

慢性合併症は、障害される血管の大きさにより細小血管障害と大血管障害に二分されます。細小血管障害には、網膜症、腎症、神経障害があります。網膜症は進行の程度によって単純網膜症、増殖前網膜症、増殖網膜症に分類されます。増殖前網膜症までは自覚症状があまりなく、増殖網膜症になると視力や視野に障害がでてきます。糖尿病網膜症は失明の原因の2位です。糖尿病のある方は血糖コントロールをよくすることと、定期的に眼科を受診し、網膜症が進行する前に適切な治療を受けることが重要です。糖尿病腎症は腎臓にあるネフロンという組織が障害されることによって生じます。ネフロンはたくさんの毛細血管が集まってできており、この血管が高血糖によって障害されることによって腎臓の機能が低下するのです。腎臓の機能が高度に障害されると、人工透析が必要になります。糖尿病は人工透析導入の原因の1位で、透析が必要になると、日常生活に影響します。神経障害は高血糖によって神経細胞の軸索という部分が障害されることによって生じます。多発神経障害、単神経障害、自律神経障害に分けられます。多発神経障害の症状は手足のしびれや痛みが左右対称に、四肢の末端から始まり、体の中心へ広がります。単神経障害の症状は、顔面神経の麻痺、物が二重に見える、片側の耳が聞こえにくいなどです。また自律神経障害では、立ちくらみ、便秘、下痢などの症状が生じます。

大血管障害は、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、下肢動脈閉塞などです。狭心症や心筋梗塞は、心臓に酸素や栄養を送る冠動脈の狭窄や閉塞によって生じます。糖尿病の患者さんは、糖尿病のない方に比べて約3倍冠動脈疾患が生じやすくなります。脳梗塞は糖尿病のない方に比べて男性で1.6倍、女性で3.0倍生じやすくなります。下肢動脈閉塞では、足指の血流が低下して皮膚が白っぽくなり、やがて青紫色になるチアノーゼ、さらに進むと潰瘍や壊死となり、切断が必要になることがあります。 

糖尿病の予防

それでは、糖尿病を予防するためにはどうしたらよいのでしょうか。やはり食事・運動・定期的な健康診断の3つが基本に挙げられます。

食事は、適正な量、栄養素のバランス、規則的な食習慣が重要です。食事量は身長(m)×身長(m)×22×身体活動量で1日の適正な総カロリー量を計算します。身体活動量は、軽労作が2530、普通労作が30、重労作が35になります。栄養素のバランスは炭水化物が1日のエネルギーの50~60%、タンパク質が標準体重1kg当たり11.2g、残りを脂質で摂るのが理想です。

食べる順番は、最初に野菜を多めに、次におかず、主食の米や麺類は主に後半に食べるようにすると血糖の上昇が抑えられます。朝食を抜くと、昼食後に高血糖になりやすいことがわかっていますので、朝食も食べるようにして下さい。

運動は、食後 12時間以内に20分以上、週3~5日以上行うと効果的です。運動の強さは、持病のない人で、心拍数が138-年齢/2になるくらい(60歳の人で心拍数108/分)が目安です。また糖尿病の早期発見のために健康診断を毎年受けて下さい。自営業の方、定年退職された方は健診を受けずに過ごしてしまうことが多くなりがちです。また定期的に病院に通院されている方も、糖尿病に関する血液検査が行われていないこともありますので、定期的に健診を受けることをおすすめします。 

糖尿病と認知症

糖尿病の患者さんは、糖尿病のない人に比較して1.5倍認知症を発症しやすくなるというデータがあります。糖尿病の患者さんが認知症になりやすい要因の一つとして血糖コントロールの不良があります。HbA1c8.0%以上の患者さんは約2倍認知症を発症しやすいというデータがあります。また低血糖も認知症になりやすくなる要因で、意識障害を生じるような低血糖を繰り返すと、1.5倍認知症になりやすくなるというデータがあります。このためご高齢の糖尿病患者さんは、低血糖を起こしにくい治療を受けることが重要です。ご高齢の患者さんに血糖降下作用の強い薬剤を処方する際は、できるだけ少量にするなど慎重に行っています。ご高齢の方は認知症予防のために、低血糖を起こしにくい適切な糖尿病の治療を受けていただくことも重要です。

終わりに

糖尿病の治療の目標は、適切な血糖コントロールを行うことによって合併症を防ぎ、「糖尿病があっても、糖尿病がない人と同じ健康寿命を保つこと」です。

※健康寿命…健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のこと。

新しい糖尿病の内服薬、注射薬の開発が進み、治療の選択肢が多くなりました。食事、運動療法だけでは不十分な場合、患者さん毎に適切な薬を選択してよりよい治療を受けていただけるよう、今後も取り組んでまいります。

一之瀬脳神経外科病院 糖尿病専門医

丹羽 智宏

 

 

一覧へ戻る

受付時間

午前:月~土曜日  8:30~11:30

午後:月~金曜日13:00~16:00

休診日
土曜午後、日曜、祝日、お盆、
年末年始
面会時間
現在面会を禁止しております