健康コラム

脳梗塞治療の最前線2024

脳梗塞治療の最前線2024

一之瀬脳神経外科病院は、脳卒中治療の最前線に立つ脳卒中専門病院として、日々奮闘しています。近年、脳卒中治療は目覚ましい進歩を遂げ、特に急性期脳梗塞に対する血栓回収療法の登場は、治療成績を劇的に向上させました。

Time is brain

2016年のHERMES studyという研究により血栓回収療法の有効性が実証されて以来、日本でもこの治療法の普及が進み、当院での治療件数も増加しています。※下表参照

当院の血管内手術件数

2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
経皮的血栓回収術 11 5 23 18 32
経皮的血栓・塞栓溶解療法 0 0 2 0 0
脳動脈瘤コイル塞栓術 10 5 8 13 16
頚動脈ステント留置術 5 3 6 12 21
血管塞栓術・その他 1 0 1 0 4
合計 27 13 40 43 73

血栓回収療法は従来の治療法と比較して、格段に患者さんの予後が改善されています。この治療法の成功の鍵を握るのは、何と言っても時間です。「Time is brain」という言葉が示すように、発症から再開通までの時間が短ければ短いほど、予後は良好となります。

この時間短縮を実現するためには、二つの要素が重要です。一つは、患者さん自身や周囲の方々が脳卒中の症状に素早く気づき、迅速に医療機関を受診することです。そのためには、地域社会への啓発活動が不可欠です。私たちは、広報紙やWeb記事を通じた情報発信など、様々な形で脳卒中の早期発見・早期受診の重要性を訴えかけています。みなさんもご自身や周りの方にのような症状がでたら、脳卒中を疑い早急に脳神経外科のある病院を受診してください。

もう一つは、病院到着後の診断から治療開始までの時間を最小限に抑えることです。ここで、脳神経外科専門病院である当院の強みが発揮されます。総合病院と異なり、MRIや血管撮影室が他科の患者さんで使用中という事態が極めて少ないのです。また、脳卒中専門のスタッフが24時間体制で待機しており、患者さんの到着と同時に迅速かつ的確な対応が可能です。

迅速な治療にむけての取り組み

当院では、患者さんの到着から治療開始までの一連の流れを、細部にわたってマニュアル化しています。採血、画像診断、血管撮影室への移動、手術準備など、各ステップを可能な限り効率化し、時間短縮に努めています。例えば、救急車からの第一報を受けた時点で、MRIの準備を開始し、血管撮影室のスタンバイを整えるなど、先手を打った対応を心がけています。

さらに、定期的なシミュレーション訓練を実施し、チーム全体の連携強化と技術向上に努めています。これにより、どのスタッフが担当しても、常に高水準の迅速な対応が可能となっています。

新血管撮影装置「Azurion」の導入

今回、当院では血栓回収療法をより安全で確実な治療として行うために血管撮影装置 Azurionを導入しました。従来の機器と比較して、低被曝でありながら高画質な血管撮影装置の導入は、当院の血栓回収療法の成績向上に寄与してくれると考えます。

急性期脳卒中、特に脳梗塞の治療において、私たち急性期脳卒中専門病院の果たす役割は極めて大きいと自負しています。専門性の高いスタッフ、最新の設備、そして何よりも「一刻を争う」という強い意識が、当院の強みです。患者さんが一分一秒でも早く適切な治療を受けられるよう、我々は24時間365日、全力で取り組んでいます。 

終わりに

脳卒中は決して他人事ではありません。もし、ご自身やご家族、周囲の方に脳卒中を疑う症状が現れたら、迷わず救急車を呼んでください。私たちは、皆様の命と健康を守るべく、常に最善の準備を整えています。一之瀬脳神経外科病院は脳卒中専門病院として、急性期脳卒中診療に今後も注力していきます

一之瀬脳神経外科病院 脳神経外科

一之瀬 大輔

 

 

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