健康コラム

脳卒中予防シリーズ⑤心臓の病気

脳卒中予防シリーズ⑤心臓の病気

心臓が脳梗塞を引き起こす?心原性脳梗塞

一之瀬脳神経外科病院では、脳疾患と関わりの深い疾患についても治療を行っています。脳梗塞の種類は大きく分けて3つあり、「ラクナ梗塞」、「アテローム性脳梗塞」、「心原性脳梗塞」があります。今回は心臓からくる脳梗塞である「心原性脳梗塞」を紹介します。

心原性脳梗塞の原因?①心房細動

心原性脳梗塞の原因について簡単に言うと、心臓で作られた血栓が何らかのきっかけで脳へ塞栓として運ばれ、脳梗塞を引き起こす病気です。脳梗塞の約20%がこの心原性脳梗塞といわれています。脳梗塞の範囲が大きいため、突然発症して麻痺や意識障害が起き、死に至る場合もあります。何らかの持病がある60歳以上の人に発症しやすいとされています。

心原性脳梗塞の原因で多いのは心房細動(脈が不規則に乱れる不整脈)です。心房細動などの不整脈により心臓の働きが悪くなり、血流がよどむことで心臓内の血液が固まってしまい血栓がつくられてしまいます。心房細動になると動悸を感じることがあり、頻度が多いとホルター心電図(24時間つけたままにする心電図)で診断がつくことがあります。心房細動になっても時間が経過していなければ、心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)で根治を目指すことが多くなっています。根治が難しくても、抗凝固薬(血液サラサラの薬)で脳梗塞を予防することができます。

しかし、やっかいなのは症状がない方もいます。その場合、知らないうちに心房細動になり脳梗塞を起こすことがあります。脳梗塞になった時には不整脈がみつからず「塞栓源不明の脳梗塞(ESUS)」として扱われることもあります。入院中のモニターやホルター心電図で不整脈が見つからないことも多く、疑わしい場合は「植え込み型ループ心電計(ILR)」を挿入することもあります。

メーカーによりますが電池寿命は2-3年ありますので、不整脈が原因の脳梗塞であればほぼ間違いなく見つかります。不整脈が見つかったり、電池寿命がきれたりした場合は抜去しますので、最終的には体に異物は残りません。体への負担は少ない手術で植え込めるので、当院でも日帰り手術を行っています。

心原性脳梗塞の原因?②卵円孔開存

心原性脳梗塞で原因が見逃されやすいものに、卵円孔開存(PFO)があります。PFOは心臓の左右の心房の間にある心房中隔に隙間がある状態です。 胎児期の遺残であり、成人の約20%にあると言われています。PFOが存在しても問題はありませんが、咳や排便などのお腹に圧力のかかる状況では、足などの静脈にある血栓が穴を通過して頭の血管に到達し、脳梗塞を起こすことがあります。見つけるためには経食道超音波検査(胃カメラのような検査)や心臓超音波検査でのバブルテストが有効です。バブルテストは点滴に少量の細かい泡を入れて心臓を超音波で観察し、お腹に力をいれても泡が右から左へ抜けていかないかを確認する検査です。治療は特殊なカテーテルで穴を塞ぐことで、脳梗塞を予防できる可能性があります。

終わりに

心原性脳梗塞は重症の脳梗塞になりやすいので、動悸が気になる方や脳梗塞の精査を奨められた方はぜひ循環器内科を受診してください

 

循環器内科 小松 稔典

 

 

 

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