健康コラム

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫とは?

寒くなり道が凍ったり、雪が降り積もったりすると増えるのが頭部外傷です。頭部外傷にも様々な種類があります。脳は頭蓋骨に守られているため、頭皮の裂傷や挫創といった表面だけのケガはそれほど心配はいりません(目に見える出血があると重症感はありますが。)問題となるのは頭蓋骨の中に影響が及んだ場合です。頭蓋骨の中に影響を及ぼす外傷には、

  • 脳挫傷
  • 急性硬膜下血腫きゅうせいこうまくかけっしゅ
  • 急性硬膜外血腫きゅうせいこうまくがいけっしゅ
  • 慢性硬膜下血腫まんせいこうまくかけっしゅ  
  • 外傷性くも膜下出血

などがあり、入院加療や場合によっては手術が必要となることもあります。

頭蓋骨と脳の間には外側から硬膜、くも膜、軟膜という3枚の膜があります。一番外側の硬膜は頭蓋骨によく張り付いているため、頭蓋骨骨折の際に硬膜の血管が傷つき、硬膜と骨の間(硬膜の外)に血液がたまることがあります。これが急性硬膜外血腫です。

脳の表面の血管からの出血や脳が傷んでしまうことで硬膜と脳の間(硬膜の下)に血液がたまるのが硬膜下血腫です。硬膜下血腫には急激に発症する急性硬膜下血腫と、少しずつ血液がたまる慢性硬膜下血腫があります。これらの外傷の中で患者さんの数が群を抜いて多いのが、今回のテーマでもある慢性硬膜下血腫です。

慢性硬膜下血腫の症状

頭部外傷の際に脳の表面にあるとても細い静脈が切れることがあります。細い静脈ですので出血してもすぐに自然と止まります。出血して止まる、出血して止まる、といったことを繰り返すことで少しずつ硬膜の下に血腫がたまってきます。これが慢性硬膜下血腫です。

少しずつの出血ですので頭部打撲直後は頭部CTなどでも異常は見つからないことがほとんどで、受傷から早い人で2週間、遅い人だと数ヶ月経過してから症状が出ます。症状は頭痛や意識障害、手足の麻痺などです。傾眠傾向になりぼーとして会話が成り立たなくなるなどの症状で認知症と間違われることもあります。

慢性硬膜下血腫の治療

少量の血腫で症状がない状態で見つかった場合は自然に消退することもあるため経過観察となります。何か症状がある場合や、症状はなくてもある程度の血腫量があれば手術が必要です。手術は局所麻酔で頭蓋骨に穴をあけ(穿頭)せんとう 、硬膜と血腫被膜(血腫のたまった周りにできた膜)を少し切開し血腫腔に管(ドレーン)を留置します。術後、留置したドレーンから血腫が排液されます。手術時間は15分~30分程度です。

慢性硬膜下血腫の再発

血腫が固い場合や被膜が何層にもできている場合は血腫腔を洗浄することもあります。通常血液はすぐに固まりますが、時間が経つと溶けてさらさらになります。このため慢性硬膜下血腫ではこのような手術が成り立ちます。急性硬膜下血腫の場合は血液が固まったままなので全身麻酔で大きく骨を外さなければなりません(開頭術)。ただし、慢性硬膜下血腫の手術は穿頭で血腫を抜くことができますが、止血を行っていません(止血するには大きく開頭しなければなりません)。止血を行わないので10人中1人は再発します。しかし10人中9人は1回の手術で完治するので、初めから開頭することはほとんどありません。

慢性硬膜下血腫の予防

慢性硬膜下血腫の一番の予防法は、頭をぶつけないように注意することです。ご自宅の家具やコードの位置を変えたりすることで、転びにくい環境を整えることが大切です。また頭をぶつけたときに外傷や変化がなくても数週間後~数ヶ月後に症状が現れることがあるため、頭部打撲後の症状でご心配な方は脳神経外科にご相談ください。

 

一之瀬脳神経外科病院 脳神経外科 小林辰也

 

 

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