健康コラム

歩き方と脳のつながり

歩き方と脳のつながり

歩き方と脳のつながり

年齢が上がってくるにつれて「歩き方がおかしい」と自覚したり、他人から指摘されたりすることは多くなってくるものと思います。
加齢による体力・筋力の低下や、膝や腰などの関節痛が原因となっていることもありますが、時として脳の疾患が原因となることがあります。今回は一之瀬脳神経外科病院で発見される代表的な疾患について説明します。

1)脳梗塞

脳の血管が詰まることで脳に血液が供給されず、脳細胞が壊れてしまう病気です。手足の運動に関わる部分に梗塞が起こることで麻痺が生じます。太い血管が詰まった場合には突然卒倒し、半身不随の状態で救急車で運ばれてくることもありますが、細い血管が詰まった場合には軽度の麻痺となり、足を引きずるようにして一般外来を受診される場合があります。
急に発症するのが特徴で、「何時から・数日前から」歩き方がおかしいという経過で来られることが多く、また同側の手や顔面にも症状が出ることがあります。

2)慢性硬膜下血腫

転倒や軽度の頭部打撲などを契機として、頭蓋骨と脳の間にある硬膜という膜を栄養する血管からわずかな出血が起こり、ゆっくり増大して血腫(血の貯まり)を形成し、脳を圧迫する病気です。きっかけとなる外傷から発症までに数週間~数か月を要することが多く、例として「1-2ヶ月前に転んで、1週間ほど前から歩き方がおかしくなった」などのエピソードで受診される方が多いです。片側に血腫がある場合は脳梗塞と同様に半身に脱力症状が出現することもありますが、両側に血腫が貯まるとふらつき・頭痛といった非特異的な症状になる場合もあります。
生命に関わることは多くなく、血腫を排出する手術によって症状の改善が期待できます。

3)正常圧水頭症

脳や脊髄のまわりは脳脊髄液(髄液)によって満たされ、保護されています。髄液は脳室と呼ばれる空間で産生され、脳や脊髄を循環した後に吸収されますが、何らかの原因で吸収が正常に行われなくなり、脳室に髄液が過剰に貯留して生じる病気が水頭症です。
特別な原因なく生じる特発性の水頭症と、くも膜下出血や外傷など他の疾患に続いて生じる続発性のものとがあります。
歩き方の変化として、小刻み歩行や、足と足の間の幅が広くなる特徴的な歩行を認めます。この歩行障害の他、進行すると尿失禁や認知機能低下を生じることがあり、これらをあわせて水頭症の三徴候と呼びます。症状は、多くは数か月単位で進行していきます。
髄液を排出する検査を行って歩行障害が改善する場合は、手術による症状改善が期待できます。

4)パーキンソン病

中脳の黒質と呼ばれる部位で産生されるドパミンはわれわれの歩行や動作をスムーズに行うのに必要な物質ですが、この黒質に変性を来してドパミンが正常に産生されなくなる疾患がパーキンソン病です。 じっとしているときに手が震える(安静時振戦)、とっさに動けず動き出しが鈍い(無動)、筋肉がこわばる(筋強直)、バランスが悪くなる(姿勢保持障害)の四徴が特徴です。
歩き方としては小刻み歩行のほかに、最初の一歩が出づらくなる「すくみ足」、一度歩くと止まりづらくなる「突進現象」などが特徴です。
脳神経内科で診断・治療される疾患であり、ドパミンを補充する薬物などの内服治療が主体となります。

このほかにも様々な脳・神経の疾患で「歩き方がおかしい」と当院を受診される方が数多くいらっしゃいます。一之瀬脳神経外科病院は脳神経外科・神経内科が併診しており、いずれの疾患も適切に診断・治療できるように対応しております。
ご自身・ご家族の歩き方が気になる場合には、年齢のせいと決めつけず、ぜひ一度当院にご相談ください。

 一之瀬脳神経外科病院 脳神経外科

一之瀬 峻輔

 

 

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