「もの忘れが気になるのですが、私は認知症なのでしょうか、それともただ年のせいだけなのでしょうか。」とよく聞かれます。病気(認知症)であるのか年齢の影響(正常範囲)であるのか判断することはなかなか難しいですが、診察では患者さんやご家族にしっかりお話を伺うことからはじめます。
判断基準のひとつとして、認知症患者さんは自分が病気であることの認識がないという特徴があります。「認知症が心配で自分で来ました」という場合と、「自分では困っていないが家族がおかしいと感じて連れてこられた」という場合では、後者の方が認知症である可能性が高いといえます。その他にも、「食事を食べたことは覚えているが、何を食べたか忘れてしまった」…ではなく、「食事を摂ったことすら忘れてしまった」などの症状も、前者は加齢によるもの忘れですが、後者は認知症の可能性が高いといえます。
また、症状の程度も重要です。今までできていたことができなくなり、それに伴ってトラブルが生じている。例えば、料理が得意だったのに最近はできなくなり、火を消し忘れて火事になりかけたとなると、認知症の可能性が高まります。
認知症以外の原因で、認知症のような症状を起こすこともあります。 睡眠薬や安定剤の服用、繰り返す転倒、ビタミン欠乏や甲状腺機能異常、感染症や脳梗塞といった治療可能な疾患が隠れている場合もあります。また、症状の進み方も重要です。認知症はゆっくり進行していくので、急に悪くなった場合などは、上記のような認知症以外の疾患を考えます。
お話を伺った後に検査にうつります。認知機能を評価する検査として、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やミニメンタルステート検査(MMSE)などがあります。これらの検査は点数が低いほど認知機能の低下が強いと判断します。点数に加えて失点した検査の項目もみていきます。その後、身体の診察や血液検査、頭の画像検査を行います。認知症患者さんは頭の画像を撮ると、脳の萎縮がみられます。
よく「画像検査で認知症はわかりますか。」と聞かれます。画像検査は認知症の診断で重要ですが、画像検査のみで認知症の診断をすることはなく、しっかりお話を伺い、他の検査を組み合わせた結果診断していきます。
認知症は早期発見が重要です。早めに診断されて治療を始めれば、進行を遅らせたり、日常生活の工夫で改善できることもあります。ご自身やご家族の、認知機能でご心配に思われる方は、一度ご受診ください。
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