未破裂脳動脈瘤は、その名の通り「未だ破裂していない脳の動脈瘤(血管にできたコブ)」のことです。破裂するまでは無症状であることがほとんどで、頭痛やめまいなどの精査、脳ドックなどで偶然見つかる場合があります。日本人の脳動脈瘤保有率は諸説ありますが、4~5%くらいで、20人に1人くらいの割合で発見され、多くの人が持っている病気であると言えるでしょう。破裂の危険性は発生した部位や大きさによって異なりますが、破裂した場合にはくも膜下出血を引き起こします。くも膜下出血を発症した場合、大まかには1/3の方が致死的となり、1/3の方に後遺症が残り、元気に社会復帰されるのは1/3の方のみといわれています。
脳動脈瘤の原因は、残念ながら解明されていませんが、高血圧や喫煙、遺伝などが関連していると考えられています。脳動脈瘤が破裂した際の典型的な症状としては、「これまでに経験したことのない」「ハンマーで殴られたような」突然の激しい頭痛を訴えて病院に運ばれることが多く、それ以外にも吐き気・嘔吐、意識障害、けいれんなどを伴うことがあります。
脳動脈瘤が見つかったからと言って、必ずしもすぐに手術が必要なわけではありません。一般的には、約5㎜以上の大きさの脳動脈瘤は、前向きに治療を検討することが推奨されています。具体的な治療法は2つあります。
① 開頭クリッピング術
全身麻酔をかけた後、開頭を行い動脈瘤の根元にクリップをとめて、血液が入り込まないようにします。
② コイル塞栓術
大腿部の血管から治療用の細い管(カテーテル)を動脈瘤の中まで到達させます。動脈瘤の内部にコイル(非常に柔らかい糸状の金属)を充填し、血液が脳動脈瘤への流入することを防ぎ、破裂を予防します。
どちらの治療法が好ましいかは、発生部位、形状、年齢、健康状態などを考慮した上で選択します。未破裂脳動脈瘤の治療をすること、それはくも膜下出血の発症の予防に繋がります。現在お困りの症状が無い場合でも、高血圧の既往のある方、親・兄弟などくも膜下出血を発症した親族がいる方は、ぜひ一度、脳ドックの受診をご検討ください。
一之瀬脳神経外科病院 脳神経外科 小林 辰也
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