健康コラム

TIAシリーズ ②放っておくとキケン⁉一過性脳虚血発作

TIAシリーズ ②放っておくとキケン⁉一過性脳虚血発作

一之瀬脳神経外科病院の外来診療や脳梗塞で入院される患者さん、そのご家族から「脳梗塞の前触れはなかった」「昨日までは元気だったのに」などのお話をいただくことがあります。脳梗塞や脳出血は「脳卒中」ともいうように突然起こることが多いですが、前兆を伴う場合もあります。それが一過性脳虚血発作(TIA:ティーアイエー)です。

症状は、運動麻痺や失語が主ですが、構音障害※(※呂律が回らず、正しい発音が出来ない)や感覚障害などが組み合わさる可能性があります。持続時間は1時間以内が主であり、長くとも24時間で消失するものであると言われ、頭部MRIで検査をすると脳梗塞の所見を認めません。しかし脳梗塞所見を認めないからと言って油断はできません。TIAを呈した方の約15%は3ヶ月以内に脳梗塞になってしまったという報告もあります。そのため、TIAを呈した方は直ちに適切な治療、原因の検索を行うべきであると言えます。「脳卒中治療ガイドライン2021」でもTIA発症後早期に治療介入を受けたものは、90日以内の大きな脳梗塞発症率が80%軽減したと記載してあります。

上記のような症状を認めた場合に、症状がすぐ消失してもそのままにせず、すぐに脳卒中治療のできる病院を受診して下さい。

また前兆のない脳梗塞を呈した場合でも患者さん、そのご家族が脳梗塞の自覚がなく、1日様子を見て、発症から時間がかかってから来院するケースも多くあります。脳梗塞であると判断する一助として、1つにはFAST(ファスト)が提唱されています。これは米国脳卒中学会が提唱した言語でFace(顔面麻痺)、Arm(腕の動きが悪い)、Speech(言葉がもつれる)、Time(時間が大事)、それぞれの頭文字をとったものになります。どうして時間が大事かというと、1つは脳梗塞後時間が経てば経つほど脳細胞が死んでしまうこと、そしてもう1つの理由は、発症から病院到着までが早ければ患者さんが受けることのできる治療が増えるからです。

発症4.5時間以内であれば、血栓溶解療法(t-PA)、そして発症8時間以内であれば、血栓回収療法が受けられる可能性があります(採血検査、脳梗塞の進行状況によっては治療できないこともあります)。それには、より簡便に脳梗塞の発症を疑い、直ちに病院へ来院するそのための指標が必要です。その目的でELVO screen(下記参照)が提唱されました。

①共同偏視(目が偏っていること)がある

②時計かメガネを見せて名前が言えない

③目の前で指を4本みせた際に正解できない

上記の内1つでもあてはまれば陽性で、脳梗塞かつ血栓回収などの治療が必要な脳主幹動脈閉塞である可能性が高いと言われています(陽性的中率54.1%)。以上の指標を用いて脳梗塞の発症を速やかに検知し、適切な医療が少しでも多くの人に届けば幸いです。

一之瀬脳神経外科病院 脳神経外科  一之瀬 大輔

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