健康コラム

神経難病とは?~長く向き合う病気と医療の役割~

神経難病とは?~長く向き合う病気と医療の役割~

神経難病とは

「難病」と聞くと、治らない病気、重い病気という印象を持つ方は少なくありません。

日本の難病法では、難病は「発病の仕組みが明らかでない」「治療法が確立していない」「希少な疾病である」「長期の療養を必要とする」病気とされています。

つまり、原因や治療法の解明がまだ十分ではなく、患者さんが長い時間をかけて向き合う必要のある病気でもあります。

その中でも、脳、脊髄、末梢神経、筋肉などに関わる難病を総称して「神経難病」と呼びます。代表的な疾患には、

  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  • パーキンソン病
  • 多系統萎縮症
  • 脊髄小脳変性症
  • 多発性硬化症
  • 重症筋無力症

などがあります。

神経難病では、現れる症状や進行の速さが疾患ごとに異なり、同じ病気でも患者さんによって経過はさまざまです。そのため、治療法や生活への影響も大きく異なり、それぞれの患者さんに応じた支援が必要になります。

パーキンソン病について

神経難病の一例として、パーキンソン病があります。

これは中脳のドパミン神経細胞が徐々に減少することで起こる神経変性疾患です。

日本では高齢化に伴い患者数が増加しており、65歳以上では約100人に1人にみられるとされています。ドパミンが不足すると、ふるえ、動作の遅さ、筋肉のこわばり、転びやすさなどが現れます。また、便秘、睡眠障害、気分の落ち込み、嗅覚低下や認知機能の変化などの「非運動症状」もみられ、生活の質に大きく影響します。そのため、患者さん本人だけでなく、家族や介護者への支援も重要です。

治療について

現在、病気の進行を完全に止める治療法はまだ確立されていませんが、症状を和らげる治療は進歩しています。

L-ドパ製剤などの薬物療法に加え、症状が進行した場合には、脳外科手術による脳深部刺激療法や、専用の装置を用いて胃ろうや皮膚を介して薬剤を持続的に投与する治療法もあります。

さらに近年では、iPS細胞から作製したドパミン神経前駆細胞を脳内に移植する再生医療の開発も進み、2026年にはiPS細胞由来製品「アムシェプリ®(ラグネプロセル)」が条件付き承認を取得しました。ただし、まだ適応や安全性を慎重に判断する必要があり、今後、限られた医療機関でのみ実施される見込みです。

神経難病とともに生活されている皆さまへ

気とともに生活していくうえで、以下の点が大切になります。

1. 体調の変化を記録する

症状、薬の効き方、転倒やむせ、睡眠、便通、気分などを簡単にメモしておくと、診察時に状態を具体的に伝えやすくなります。私たちが患者さんの様子を直接確認できるのは診察室だけです。神経難病では症状が変動することもあるため、日々の変化を教えていただくことが、薬の調整や必要な支援の判断につながります。

2. “頑張る”より“消耗を減らす”

神経難病では、無理を続けるよりも、休む時間や人に頼る部分を含めて生活を整えることが大切です。家の段差、浴室、トイレ、移動手段、食事の姿勢などを早めに見直すことで、生活しやすくなる場合があります。

これは介護を担うご家族にも当てはまります。一生懸命に介護されているご家族のお姿にはいつも頭が下がりますが、介護する方が頑張りすぎて倒れてしまうと、患者さんの生活も支えられなくなります。

デイサービスなどの支援を活用し、人に頼ること、不安を相談すること、介護を分担することが重要です。介護されている方の負担が少しでも減り、十分な休養とご自身の時間が確保できるようにしてください。介護される方の人生や健康も大切にしてください。

神経難病と向き合うことは、患者さん本人だけでなく、ご家族にとっても大きな負担となります。病状の変化への不安や、これまで通りの生活が難しくなることも少なくありません。しかし、医師、看護師、薬剤師、リハビリ専門職、医療ソーシャルワーカー、介護職などが連携することで、病気があってもその人らしい生活を続けられる可能性は広がります。

おわりに

神経難病は長く向き合う病気です。だからこそ医療には、病気だけでなく、患者さんやご家族の生活全体を支える姿勢が求められます。「病気に支配される」のではなく、「病気とともに生きる」ことができるよう、私たちは、治療、リハビリ、生活支援、社会制度を組み合わせながら患者さんとご家族を支えていきます

一之瀬脳神経外科病院

神経内科 佐藤 充人

 

 

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