
一之瀬脳神経外科病院でてんかん外来を担当させていただき、3年が経ちました。これまでてんかんという病気と治療について、てんかんと間違われやすい疾患について、そしててんかんとスティグマについて寄稿させていただきました。今回は「てんかんとともに暮らす」をテーマに、日常生活で大切なことについてお話しさせていただきます。
てんかん治療の基本は抗てんかん発作薬の内服です。
てんかん発作を起こさないために、薬は毎日欠かさずに忘れずに内服することが大切です。しかし「忘れずに薬を飲む」ということはとても大変なことです。薬の飲み忘れはしばしば起きることですが、その原因はいくつかあります。忙しくて忘れてしまった、出先で薬を持っていなかった、飲む前に寝てしまった、薬の量や飲み方が複雑で忘れてしまったなど。他には薬の副作用があり飲みたくなかったから飲まなかった、病気を受け入れられずに飲まなかったなど。薬を飲み忘れてしまった場合、遠慮なく相談して下さい。どうして忘れてしまったのかを一緒に考えて、その原因を見つけて対策していきましょう。もし薬の副作用で飲みたくない場合には、薬の減量や変更も一緒に考えていきましょう。
一番大切なのは、主人公となる患者さんが、この病気を理解し向き合い、医師と一緒に治療を考え行っていくことだと思います。
そして周囲の方は、患者さんが頑張って薬を飲んでいることを、是非褒めてあげて下さい。「忘れずに頑張って飲んでいるね。えらいね。」と声をかけられると、薬を頑張って飲もうという気持ちがより強くなります。
睡眠不足はてんかん発作を誘発する最も大きな要因の一つです。
夜更かしや不規則な生活は発作のリスクを高めるので、十分な睡眠をとること、できるだけ規則正しい生活リズムを維持することがとても重要です。仕事や学校で忙しくなると睡眠時間が短くなりがちですが、質の良い睡眠は薬と同じくらい大切なものです。ぐっすり眠れると次の日が気持ちよく過ごせますし、発作も起きにくくなります。
人間の身体には体内時計があります。朝に光を浴びること、朝食を食べること、寝る前に強い光を避け、同じ時間に床につくことで、体内時計が整いリズムの取れた生活ができます。一定の生活リズムを作ることが、心身だけでなく、様々な病気によい効果を与えます。
お酒(アルコール)はてんかん発作を起こしやすくさせます。
アルコールそのものが発作を起こしやすくさせるだけでなく、睡眠の質を低下させること、さらには抗てんかん発作薬の効果にも影響を与えることがあります。
発作を起こしやすくするお酒は避けるようにしましょう。それでもお酒を嗜む方は、飲酒量を控えめにして酔わない程度にすること、生活リズムや翌日に影響しないことが大切です。もし付き合いなどでどうしてもの場合でも、乾杯の1杯のみにとどめるのがいいと思います。
てんかんと診断されると、運転など出来なくなることもあり、「これからどうなるのだろう」「また発作が起きたらどうしよう」と不安を感じている方も多くおられます。
その不安は誰もが感じることです。不安があれば医療関係者だけでなく、信頼できる家族や友人と話してみましょう。話すだけで気持ちが楽になったり、誰かが助けてくれます。そして「制限がある」ことよりも、「今、自分にできること」に目を向けると気持ちが楽になることもあります。
てんかんがあってもなくても、病気があってもなくても、あなたの価値は変わりません。大変な病気と感じると思いますが、振り回されすぎず、うまく付き合っていき、穏やかに自分らしく生きていけることを応援しております。
今回はてんかんとともに暮らす上で大切なことをお話しさせて頂きました。
大切なのは発作を起こさないような生活を送ること、周囲の方が理解をすること、一人ひとりの病状に合わせて生活を考えることです。
てんかんがあるからといって生活のすべてを制限する必要はありません。てんかんという病気は患者さん一人一人で異なりますので、日常生活で気になることや不安なことがあれば、遠慮なく外来で相談して下さい。患者さんやご家族が安心して充実した日常生活を送れるように、一緒に考えていきたいと思っております。
一之瀬脳神経外科病院 てんかん外来
信州大学医学部附属病院 てんかんセンター
金谷 康平
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