
認知症は予防できるのでしょうか?
年齢と共に、誰にとっても身近な病気である認知症ですが、運動や生活習慣を見直すことで、認知症の発症リスクを下げる可能性があることが分かっています。
本コラムでは、認知症予防と運動の関係について、当院の健康運動実践指導者が分かりやすく解説します。
認知症の患者数(65歳以上)は、2024年時点で約443万人と推計されています。さらに、軽度認知障害(MCI)と呼ばれる「認知症ではないものの、認知機能の低下がみられる状態」にあたる方も約558万人いるとされており、高齢者の認知機能の低下は決して珍しいものではありません。
認知症だけでも、65歳以上のおよそ8人に1人が該当すると推計されています。
厚生労働省「認知症及び軽度認知障害(MCI)の有病率調査並びに将来推計」(2024年)より
認知症は、脳の神経細胞が徐々に壊れていくことで、さまざまな症状が現れます。
まずみられるのが、「中核症状」と呼ばれるものです。
これは認知症の方に共通してみられる症状で、記憶障害(もの忘れ)、見当識障害(時間や場所が分からなくなる)、判断力の低下などが挙げられます。
その後、「BPSD(認知症に伴う行動・心理症状)」がみられることがあります。
これは中核症状に加え、環境の変化やストレスなどが重なって引き起こされるもので、不安、興奮、妄想、幻覚などが含まれます。
もの忘れは、加齢によっても起こりますが、認知症によるものとは違いがあります。
老化現象によるもの忘れは、例えば夕食をたべた事は覚えていますが、「昨日の夕飯なに食べたかな?」と経験の一部を思い出せないといった事が多いですが、認知症では「昨日夕飯は食べていない」と経験した事の全てを忘れることがあります。
また、認知症は徐々に進行していき、日常生活に支障を来すことも特徴です。
<老化現象と認知症によるもの忘れの違い>
認知症にはその原因などにより、いくつか種類があります。
■ アルツハイマー型認知症
認知症の中で最も多いタイプです。脳内に異常なたんぱく質(アミロイドβ)が蓄積し、脳の神経細胞の働きが低下することで、徐々に脳が萎縮していきます。もの忘れから始まることが多いのが特徴です。
■ 脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などによって脳の血管が障害され、脳の一部がうまく働かなくなることで起こります。高血圧や糖尿病などの生活習慣病が発症のリスクを高めます。
■ レビー小体型認知症
脳内に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質がたまり、脳の働きに影響を与える病気です。認知機能の変動や幻視、手足の震えなどがみられることがあります。
■ 前頭側頭葉型認知症
脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することで起こる認知症です。もの忘れよりも、性格や行動の変化、社会性の低下などが目立つことがあります。
<主な認知症の種類別割合>

参考:厚生労働省「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能への障害への対応」(平成25年5月報告)より作成
認知症の中で最も割合が多いのが、アルツハイマー型認知症です。
その危険因子としては、加齢のほか、糖尿病や高血圧といった生活習慣病が挙げられます。
そして重要視されているのが運動不足です。
遺伝的要因も関係しますが、生活習慣などの環境要因も発症リスクに大きく関わることが分かっています。
アルツハイマー型認知症は、遺伝的要因に加え、生活習慣やストレスなどの影響により、脳内にアミロイドβという物質が蓄積することから始まります。
その後、脳神経細胞の変化が進み、前臨床期アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)の段階を経て、認知症を発症すると考えられています。
一般的なケースでは、発症後に治療が開始されることが多く、進行を完全に止めることは難しいとされています。
しかし生活習慣の改善やストレス対策を行うことで発症リスクを下げたり、または早期発見・早期治療を行うことで、発症を遅らせる可能性があることが分かっています。
運動が認知症予防に効果的とされる理由の一つに、「BDNF(脳由来神経栄養因子)」の存在があります。
有酸素運動を行うことで、BDNFが分泌されます。
BDNFは、「脳を育てる栄養」のような働きを持つ物質です。増加することで神経細胞同士のつながりが保たれ、新しい神経細胞が生まれやすくなると考えられています。脳の中でも記憶(特に短期記憶)を司る「海馬」の働きを支えることから、認知症予防との関連が期待されています。
有酸素運動の他にも、脳への刺激が大きいとされる手指運動(手や指を使った運動)も有効とされています。
具体的な運動方法については、次回のコラムで詳しくご紹介します。
これまで解説したように、認知症を予防するためには、
といった日々の積み重ねが重要です。
認知症は完全に防ぐことが難しい病気ではありますが、生活習慣を見直すことで、発症リスクを下げられる可能性があります。
まずは"体を動かす習慣"を意識することから始めてみましょう。
次回のコラムでは、「脳を刺激する」と「適度な運動」という2つに注目した、コグニサイズをご紹介したいと思います。
一之瀬脳神経外科病院
健康運動実践指導者 山下 史織
リハビリテーション技術部長 和氣 良彦
一之瀬脳神経外科病院では、脳疾患に関する様々なテーマで、健康コラムを公開しています。次回は「認知症 予防のための運動-実践編-」です。どうぞご期待ください!
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