一之瀬脳神経外科病院
麻酔科 藤澤 窓奈
手術の際に単に「眠らせる」と思われがちな麻酔ですが、実際は眠る以外にも全身状態を管理・維持し、患者さんの安全を守り、手術の成功や早期回復を支えています。今回の医療スタッフインタビューでは、手術に欠かせない「麻酔」について、麻酔科の藤澤先生にお話を伺いました。
麻酔科は、周術期(術前・術中・術後の期間)を患者さんにより安全に過ごしてもらえるようにしている科です。
手術前には、患者さんの検査結果を確認して、「麻酔に耐えられるかな?」「どんなリスクがあるだろう?」といったことを判断します。心配な要素があれば、手術方法や麻酔方法を主治医(脳神経外科)の先生と相談することもあります。
手術中は、患者さんが手術室に入室してから退室するまで、ずっと麻酔科医が付きっきりです。医療ドラマでは、麻酔科医は座っているシーンが多いですが、実際には呼吸器の管理をしたり、血圧を調整したり、終始集中した状態で臨んでいます。
「麻酔から目が覚めますか?」「眠ったままになりませんか?」という質問が一番多いですね。麻酔薬は、必ず代謝(体内で分解・変換され、最終的に対外へ排泄)されます。代謝されると目が覚めるので、ご安心ください。
反対に、「麻酔が効かないことはないですか?」というのも多くいただく質問です。全身麻酔の場合は、脳波から麻酔の深さを測るモニターを使用しています。麻酔の深さ・眠りの深さを計測しながら管理しているので、「全身麻酔が効かない、眠れない」ということはないです。
また、「手術時間が長引いた時に、途中で麻酔が切れてしまうのでは?」と心配される方もおられます。最近ではお薬の投与から10秒程度で効果があり、中止すれば10~30分程度で覚醒するような短時間型の麻酔薬を使用しています。手術開始から終了まで、持続的に麻酔薬を流しているので、途中で効果が切れてしまうことはありません。手術予定時間に合わせて「〇時間分の麻酔薬」を使用している訳ではないので、手術時間に左右されることなく麻酔をすることができます。
手術を受けるよりも全身麻酔の方が怖いという風に感じておられる患者さんも多いので、少しでも安心していただけるように、術前にしっかり説明していきます。
一番はやはり「禁煙」です。
手術が決まったら、1日でも禁煙期間が長い方が術後の合併症が起こりにくく、傷の治りも良いとされています。また、動揺歯(グラグラしている歯)がある場合や、歯周病のある方などは、事前にかかりつけ歯科医にご相談されることをお勧めしています。さらに、直近で予防接種を受けた場合、普段と体調が違う場合、血縁者で麻酔の副作用があった場合なども、事前にご相談ください。
予定手術の患者さんは、「病気を治すために立ち向かうんだ!」という気持ちで手術に臨んでいただけるよう、可能な限り歩いて手術室に入室していただきます。入室後は患者さんの識別、医療スタッフ間の申し送りと最終確認を行い、モニターを装着します。
全身麻酔の場合は、患者さんに最終確認のお声をかけ、酸素マスクを装着後、全身に十分に酸素が行き渡った後に点滴で眠くなるお薬を入れていきます。点滴開始から10秒程で深い眠りに入ります。麻酔がかかっている間は自分で息をする力が弱まるので、呼吸を助ける管を口からを入れ、そこから酸素を送ります。その後、吸入または点滴で麻酔薬を入れていきます。
麻酔薬は「抑制」に働くお薬なので、血圧も平常時より下がりやすくなります。手術中に適正な血圧に管理することも、麻酔科医の大きな役割です。脳神経外科の手術では、疾患の種類により、手術中に低い血圧での管理が望ましい場合や、反対に高めの血圧での管理が望ましい場合があるので、患者さん一人ひとりに合わせて主治医の先生と相談しながら進めていきます。
手術が終了すると、麻酔薬を中止します。投与中止から10~30分程度で目が覚めます。最近の麻酔薬は、より安全で短時間タイプの(麻酔薬を継続している間は効果があり、中止すると短時間で目が覚める)ものが多くなっており、当院でも
目が覚めたら、呼吸を補助していた口の管を抜きます。脳疾患の手術では、術後すぐに意識状態と手足の動きなどを確認することが多く、これらを確認後、病室に移動します。
手術後は、患者さんの状態を確認しながら、創部の痛みや麻酔後の吐き気の管理を中心に行います。術後の辛い時期を、少しでも楽に過ごしていただけるよう、患者さん毎にきめ細やかなケアを心がけています。
当院では、「痛みがまだ強い」「吐き気が続く」といった声にできるだけ応えられるようにしており、麻酔科が術後もしっかりフォローできるのが強みだと思っています。
慢性硬膜下血腫や血管内治療など、局所麻酔で行うケースも多くあります。その場合でも、手術中の記憶が辛い思い出にならないよう、鎮静作用のあるお薬を使って少し眠るような状態で手術を受けられるようにしています。“胃の内視鏡検査を受ける時に、辛いからお薬を使う”のと同じような感じだと思っていただけるとわかりやすいでしょうか。
インタビュー記事はまだまだ続きます!
インタビュー『手術に必要な「麻酔」とは?』
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