医療スタッフインタビュー

多職種対談~合言葉は“おうちへ帰ろう”~

多職種対談~合言葉は“おうちへ帰ろう”~

メンバー

病院長、佐藤看護部長、医療連携課萩原課長、リハビリテーション技術部和氣部長、看護部原課長、MSW大島

入院された患者さんへの合言葉があるそうですが…ご紹介いただき、その合言葉がどのように誕生したのか教えてください。

病院長:
合言葉は「おうちへ帰ろう」ですね。
これは何か合言葉を作りたいな~から生まれた言葉ではないんですよ。
1年くらい前に、ある会議の中で「患者さんやご家族が求めてることってなんだろう?」を考えていった時、脳外科病院で救急で入院する患者さんが多いから、1番はもちろん「病状が良くなること」「後遺症が少ないこと」で。じゃあ何のために治療やリハビリを頑張るのか…それは「おうちに帰りたい」からだよねって。ご家族だって本当は病状が良くなれば家に帰してあげたいと思う。ただ、脳疾患は後遺症が残ることがあるから、病状は良くなっても、この状態で家で生活できるのか不安だと思うんですよね。ご家族も「介護が必要な家族ができるのが初めて」の場合が多いので、不安もその分大きい。その不安を取り除く為に、安心して「おうちへ帰る」為に、当院ができる限りのサポートをしましょうと。その為の合言葉として誕生しました。

佐藤看護部長:
従来の急性期病棟では、救急・手術後の看護にフォーカスしていた部分がありました。
そこに回復期病棟ができ、現在の当院の強みである「急性期から回復期を経て、在宅復帰へ」というところが明確になったし、院内のシステムとしてそれを実行していた。職員の意識の中にはこれまでもずっと「患者さんをおうちへ帰してあげたい」想いはあったと思います。でも目標やスローガンとなる言葉がなかった。同じ方向は向いているはず…みたいな感じでやっていた。「おうちへ帰ろう」が合言葉となったことでそれが道しるべとなり、完全に同じ方向を向けた、そんなような感じです。

「おうちへ帰ろう」ができたことによって、「しっくりきた」そんな感じでしょうか?

病院長:
そうですね。患者さんやご家族を支える色んな職種が「しっくりきた」からこそ、具体的に何をしようか考えられるようになったと思います。当院は元々、職種間の垣根がかなり低く、多職種が協働して患者さんの対応をしてきた。今ではそれぞれの職種が、以前よりもさらに連携して、一人ひとりの患者さんの「おうちへ帰ろう」実現の為に動いています。

「おうちへ帰ろう」を実現する為の取り組みについて教えてください。

佐藤看護部長:
急性期病棟では、積極的に関わりたいと手を挙げてくれた職員を、現在では看護部の中での「退院支援係」として活動してもらっています。これもいい変化でしたね。これまで以上に患者さんやご家族の意向をしっかりを聞き取り、スタッフに共有します。

原課長:
実際に「おうちへ帰ろう」が浸透してからは、看護師と患者さんやご家族の方と話す内容が変わってきたのが大きな変化かなと思います。ベースに「おうちへ帰ろう」があるからこそ「実際におうちではどうでしたか?」から始まり、次に「そのために自分たちは何ができるのだろう」と考えるような発想に変わったのだと思います。

医療ソーシャルワーカー大島(以下MSW):
患者さんもご家族の方も、病気の発症によって置かれている状況や生活の状況が急に変わってお互いすごく不安に感じられると思います。そんな中で「おうちへ帰ろう」の合言葉が患者さん、ご家族、職員とみんなの共通目標になったんですね。みんなで一つの目標に向かって進んでいけることで色んな事が共有しやすいですし、支援のやりがいも感じます。

和氣部長:
患者さんも明確に目標があると、リハビリに向かう姿勢や意気込みが違うんですよね。病気を発症して落ち込んだり、なかなかどうなりたいとか目標に気づけない方もおられます。最初は小さい目標からかもしれませんが、一緒に目標を探すことも大事にし、患者さんに合わせて目標を具体的に共有するようにしています。おうちに帰ってからの生活をイメージしてもらえるようにして、じゃあ「この練習がおうちに帰ることに繋がっている」、「あとここがもうちょっとできるようになればいいよね」って思ってもらいながらリハビリに取組んでもらえるようにしています。

萩原課長:
「おうちへ帰ろう」が生まれる前から、急性期病棟では入院患者さんの退院支援のためのカンファレンスが週1~2回行われていました。そこでは医師・看護師・リハビリ・MSW・事務で新たに入院された患者さんをどんな風に支援していくのかを話し合っています。「おうちへ帰ろう」が生まれて以降は、看護師さんも退院支援に積極的に関わりたいというように意識が変わったように感じています。
医療連携課として、MSWさんと連携しながらこの「おうちへ帰ろう」を後押しできればと考えています。

佐藤看護部長:
今の時代「多職種連携」や「患者さんを地域でケアする」はどんな病院もやっていることだと思います。その中で当院は小規模だけれど、急性期への入院から回復期でのリハビリを経て、在宅復帰後の介護サポートまでを行っている。これまでのシステム面というハード部分があった上に「おうちへ帰ろう」が生まれて以降、職員の手によって、それぞれの病期へ「切れ目なく繋いでいく」ソフト面が加わった。患者さんもご家族も職員も、「おうちへ帰ろう」を目標にして全員で同じ方向を向いて動いていけば、後遺症があってもおうちに帰ることができるし、それを実現させていく、これは当院の最大の強みだといえます。

患者さんやご家族の方の「おうちへ帰ろう」への反応はいかがでしょうか?

病院長:
急性期に入院した後、早い段階からおうちへ帰ることを意識的にお伝えするようにしています。発症から1週間後くらいのタイミングなので、患者さんやご家族も、正直言ってびっくりされることが多いです。でもその段階からお伝えすることにはとても意味がある。医師や医療者側からの一方的な目標設定だったらいけないので、よくよくお話を聞いて意向の確認をした上で、目標を共有するんです。そして患者さん本人と医療者みんなで、治療とリハビリを頑張る。あとはご家族の「おうちへ連れて帰る不安」を軽減するために、社会的サービスや福祉支援などについてしっかり説明して、準備をしていく。

原課長:
患者さんやご家族に「不安がある」ことを想定し、お話していくようにしていますね。不安なことは患者さんやご家族だけで抱えるのではなく、みんなでサポートしていく体制があることをわかっていただけるように準備します。

佐藤看護部長:
どんなに介護度が高い方でも、一週間にどれくらいのサービスを入れればおうちで過ごせるというのがわかる介護度別の表を作成したりして、ご家族の方が具体的に考えられるようお手伝いしています。

MSW大島:
基本的な目標が「おうちへ帰ろう」になったことによって、発症後間もない急性期の今はまだすぐには帰れないけれど、これから数か月かけて本人さんには回復期病棟でリハビリを頑張ってもらって、その間にご家族と今後に向けての話し合いをする。
介護保険制度や、お仕事されていた方なら傷病手当のご案内、障害者手帳取得に向けたお話や、その後受けられるサービスについてもお話します。その話し合いを重ねていく中で、共通の目標である「おうちへ帰ろう」があることで、同じ方向を目指していけるやりやすさはありますね。

和氣部長:
リハビリでは急性期も回復期も、入院後の早い段階からご自宅の環境をお聞きし、患者さんがご自宅に帰ってからの生活をできるだけ具体的にイメージできるようにしています。ご自宅で生活するために必要となる動作は何か?ご家族が安心・安全に介護するためにはどういった方法がいいか?などの視点も取り入れて、患者さんと目標を共有しながら毎日のリハビリを行います。
またご家族にも来院していただき、安全な介助方法をお伝えし、一緒に練習するなど、不安や疑問を少しでも減らせるように努めています。
お話だけでは分かりにくい家屋環境の場合は、実際に患者さんのご自宅に伺います。家屋調査は基本的に、ご自宅に退院される予定の方に行い、患者さんやご家族の希望を聞きながら、退院後に関わってくれるケアマネさんや福祉用具の担当者さんに同席していただくようにもしていて、入院中の経過をお話しながら、色んな方の在宅生活を支える専門家である皆さんにご意見をいただきながら、患者さんが安全に生活できるための提案を行います。
当院からもリハビリスタッフだけではなく、できる限り看護師が同行します。リハビリ面だけではなく生活面のこともお話できるようにして、退院後の生活面を支えるスタッフの方に「切れ目なく繋いでいく」ことを大切にしています。

患者さんやご家族に向けたメッセージをお願いします。

病院長:
入院される患者さんの中には、病状以外にも色んな事情や背景がある方がおられますが、これからも当院は患者さんの「おうちに帰りたい」、ご家族の「おうちに帰ってきてほしい」に寄り添える病院でありたいと考えます。これからも「おうちへ帰ろう」の合言葉を共通の目標にして、この地域の脳疾患の患者さんやご家族を支えてまいります。

本日はありがとうございました。

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