
脳卒中などの疾患による後遺症や加齢の影響で、「食べる力(嚥下機能)」が低下することがあります。そんなとき、体に必要な栄養や水分を安全に届けるための方法として行われるのが「経管栄養(けいかんえいよう)」です。
経管栄養は、在宅介護や施設での生活の中でも、医療と介護が連携しながら支えることができる重要なケアのひとつです。今回のコラムでは、経管栄養とはどのようなものか、どんな方法があるのか、介護の現場で気をつけたいポイントなどをわかりやすく解説します。
病気や加齢によって、食べ物をうまく飲み込む力(嚥下機能)が弱くなると、誤って気管に食べ物が入ってしまう「誤嚥(ごえん)」の危険が高まります。
そんなとき、栄養や水分を安全に体に届けるために行うのが「経管栄養」です。
経管栄養は、口から食べることが難しくなった方にとって、命をつなぎ、回復を支えるための大切な手段のひとつです。
経管栄養には、主に次の2つの方法があります。
経鼻経管栄養法
鼻から細いチューブを胃まで通し、栄養剤を注入する方法
経瘻孔法(けいろうこうほう)
消化管と外部をつなぐ孔(瘻孔)を作り、そこから経腸栄養剤を投与します。胃に瘻孔を作れば「胃瘻(いろう)」、腸なら「腸瘻(ちょうろう)」となります。
経管栄養の目的は、栄養・水分・薬剤を安全に体に届けることです。適切に行うことで次のような効果が期待されます。
・栄養状態の改善により体力や免疫力が向上する
・脱水や低栄養を防ぐ
・誤嚥性肺炎のリスクを軽減する
・栄養状態の安定がリハビリや回復の助けになる
経管栄養は「食べる力を奪うもの」ではなく、「生きる力を支えるサポート」であるという理解が大切です。
自宅や施設で経管栄養を行う場合、看護師や訪問看護のサポートを受けながら、家族や介護職がケアに関わります。安心して続けるためには、次のようなポイントを心がけましょう。
清潔な環境で準備する
手洗いや器具の管理を徹底し、感染を防ぎましょう
正しい体位を保つ
注入中は上体を30〜45度ほど起こし、注入後もしばらくその姿勢を保ちます。
スピードはゆっくり
早すぎる注入は、吐き気や腹部膨満の原因になります。
異常があれば無理をしない
チューブが抜けた、詰まった、発熱や嘔吐があるときは、すぐに医療機関や訪問看護へ連絡します。
経管栄養を始めるとき、多くのご家族が「もう口から食べられないのか」「このままでいいのか」と不安を抱かれます。
経管栄養を行っていても、「食べる楽しみ」を完全に失うわけではありません。
口腔ケアや味覚刺激を続けることで、口の清潔と“食べたい気持ち”を保つことができます。
また、家族が食卓での会話や香りを共有することで、本人が季節や家庭の雰囲気を感じられる時間にもなります。経管栄養は、口から食べることが難しくなった方にとって、生命と生活の質を守る大切な方法です。
“食べる力を支えることは、生きる力を支えること”
私たちは、患者さんとご家族が住み慣れた地で、安心して介護を続けられるよう、これからも全力でサポートしてまいります。
一之瀬脳神経外科病院では、訪問看護ステーション・訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション(デイケア)・訪問介護ステーション・居宅介護支援事業所・有料老人ホームなどの介護サービス提供事業所があります。お気軽にご相談ください。
住宅型有料老人ホーム シニア・メゾン エミレーツ
看護師 堀内 公子
0263-48-3300( 24時間365日対応 )
午前:月~土曜日 8:30~11:30
午後:月~金曜日13:00~16:00